第十回 熱いはうまい!?

コーヒーは熱いのが美味しいと思い込まれているところがある。
確かに寒い日に飲む温かいコーヒーは美味しいだろう。
特に冬の風の中バイクに乗って冷えた体には缶コーヒーの温かさが身にしみる。

これは寒い体を温める効果を考えると良い(=美味しい)ということだと思う。
体の効能を考えるとそうであろう。

これをコーヒーを味わうということを主体にして考えるとどうだろう。
コーヒー(コーヒーに限らずその他さまざまな飲み物もそうだけど)の味覚的感覚での良い温度帯というのはそれとは別にあると思う。
味覚的感覚で良いというのは正確に定義はないが、味と風味を一番感じられる温度帯だと思う。
それは「あつあつ」の状態ではない。
「あつあつ」の状態だとまず「熱い」という感覚が先に来てしまい味を感じるどころではない。
これがやや低めの「少しぬるめ」の温度だと一口目から味を感じることが出来る。
コーヒーの濃さ、苦味、酸味、甘み、複雑な香りを一口目でしっかりと感じる。
こうした要素を感じてから、そのコーヒーが美味しいか不味いのかを判断するというのがコーヒーに向き合って味わうということではないだろうか?
こういうとなにか神妙な気持ちでコーヒーを飲まなければならないのか?と律儀な方は考えるかもしれないがそんなことはないと思う。

あくまでもコーヒーを味わってもらうということを主体に考えているので、お客様はただコーヒーを飲んでいただければそれでよい。
ただし、熱い=うまいの考えでは頭でコーヒーを飲んでいるようなもので、自分の舌でしっかり味わってない。
たまに、この銘柄のコーヒーはこういう焙煎なのでこういう味だからうまいなどという人がいらっしゃるが、それも頭でコーヒーを飲んでようなもんで味わっているのではない。
しっかり目の前に提供されたコーヒーを舌で味わってほしい。
そうするとそのコーヒーの味がわかってくる。
当店の常連客では自分が上記のようなことを始終語っているので、やはり「あつあつ」より「少しぬるい」ほうがコーヒーの味がよくわかるとおっしゃっていただく方が多い。
そういってくれるとこちらの考えていることが共感されて大変嬉しい。

myカップ
自宅のカップ(前回のカップへのこだわりは全く無視されている)