第六回 抽出について(ネル編)

 

当店にきていただいた方ならご存知かもしれないが、
ストレートコーヒーを注文するときペーパー抽出とネル抽出を選択できるようになっている。
前回はペーパー抽出について述べたので、今回はもう一つのネル抽出についての話です。

ペーパー抽出とネル抽出は何が違うのでしょう?という質問をしばしばされる。
おおざっぱにいうと「味」がネル抽出のほうがペーパー抽出より複雑になるということだろうと思う。

ペーパーとネルでは何が違うのかというと、コーヒーを漉す目の大きさが違う。
ペーパーは目の粗さが細かい。ネルは目の粗さが荒い。
この点が味の構成を変える大きな要因になっているだろうといわれている。

目の大きさが違うので、抽出方法を変えることにしている。

ペーパー抽出の場合は前回書いたのだが80℃から90℃くらいのお湯で抽出する。
当店では沸騰したヤカンの湯からドリップポットに移し変えて抽出を始めている。

ネル抽出の場合はドリップポット内の水温で75℃(±2.5℃)で抽出を始める。

この温度のちがいは

「ペーパー抽出」
目が細かい→成分が出にくい→反応の速度を速める

「ネル抽出」
目が粗い→成分が出やすい→反応の速度を遅くする

おおざっぱにいうと上記のとおりです。
もっともネル抽出でもペーパーのように80℃をやや超えた温度で抽出をしても構わない。
これでも美味しいコーヒーになりますが、ネル抽出の特徴を生かしづらく感じます。

ネル抽出は先にも述べたように味が複雑になるように感じます。
また、舌触りがややペーパー抽出に比べると滑らかになるように感じます。
この特徴を「より」感じてもらうには、カップに提供されたときに温度がやや低めの方がつよく感じやすい。
カップに提供された温度が高いと「熱い」という感覚が先になり味覚の構成にはあまり関心がいかない。
よりネル抽出の特徴を味わってもらうためにやや低めの温度が必要だと思います。

もしご自宅でネル抽出をされる方用に当店の環境をまとめておきます。

「ネル」
外側起毛、綾織
2枚あわせ

ネル
2枚はぎのおわん型を使用(自家製)

 

 

 

 

 

 

 

「水温」
ドリップポット内の水温で75℃(±2.5℃)

「コーヒーの粒度」
やや角が立つくらいの均一に挽かれたもの

下図参照

粉砕具合
やや角が立つぐらいのもの。

 

 

 

 

 

 

 

「コーヒー使用量」
1人前・・・20g
2人前・・・40g
3人前・・・55g

「抽出方法」
①中心に点滴する。最初の一滴がサーバーに落ちるぐらいまで。
②全体的に湿らす。
③膨らんできたら湯量を少しずつ増やし抽出量まで抽出する。